
取締役会の「スキル・マトリックス」で成長戦略の実効性や真剣度を担保
野村アセットマネジメント
運用部
日本株アクティブグループ バリューチーム
チーフ・ポートフォリオマネージャー
宮崎義弘氏
事業ポートフォリオの見直しに注目
バリュー株投資で「強い」企業を「安く」買う。株価と企業価値との乖離は中長期的には修正され、実力のある企業は企業価値が増加するポテンシャルが高いという考えで過去20 年間パフォーマンスを築いてきた。運用を担当する『ジャパン・ストラテジック・バリュー戦略』の2025年9月末時点の運用資産残高は、国内のリテール向けと海外の機関投資家向けを合わせて約5100億円だ。
ROE(株主資本利益率)の目標値を明確に打ち出し、事業ポートフォリオの見直しや会社組織の構造改革に取り組んでいる企業は、投資家を意識した経営を実践していると評価する。
投資家の「納得感」を重視してほしい。仮に足元のPBR(株価純資産倍率)が0.8倍でも、なぜ1倍に届いていないか、今後どのようなプロセスでいつまでに目標を達成するのかステップアップの手順が明確な説明ならば、我々も投資の継続を検討しやすい。
成長戦略の実現性を見極める観点からガバナンス体制に注目する。特に経営陣の戦略をチェックする上で便利なのが「スキル・マトリックス」だ。
一般的には、縦軸に取締役メンバーの氏名と役職、横軸に「企業経営」「グローバル事業」「監査・法務」「財務会計」「DX」「人財戦略」「サステナビリティ」などの分野が記されている。各メンバーについて、専門性・実績があり、経営に高い貢献が期待される分野にはマークがついている。
スキル・マトリックスがあると「グローバル事業に知見のある取締役が多い。海外事業の売上を今後10年で2倍にする方針は期待できる」などと、企業の情報発信の蓋然性が高まる。掲げている成長戦略の実効性や真剣度を担保する重要な判断材料といえよう。
あるエンターテインメント企業との投資家ミーティングで、時間が超過したため役員クラスの方も他の社員と同様に会議室から退出させられ、そのフラットな文化に驚いた。
ただし、ネガティブな印象ではなく、独創的な発想が重要なエンターテインメント業界なので、フラットで風通しのよい企業組織であることが実感できたのは収穫だった。
海外投資家は経営陣の「覚悟」を重視する。売上目標は「今後10年以内に30~40%増」ではなく、「3年後に1.5倍にする」など退路を断ち切るスタンスを示してはどうか。
事業ポートフォリオの説明でも単純化するのが望ましい。仮に8つのセグメントがある場合も、3つくらいのグループに整理してからアピールしたほうが聞く耳を持ってくれる。
PCで見やすい横長の統合報告書
多くの企業が統合報告書を発行するようになった半面、構成や内容が似通う「テンプレート化」が気になる。
統合報告書をPCでチェックする投資家も多いだろう。会議用のパワーポイント資料のように横長の判型にすれば見やすいのではないか。従来の縦長の統合報告書から横長へ変える過程で、掲載内容をその企業らしくブラッシュアップしてもよい。