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Feature 特集
著名ファンドマネージャーへの7つの質問 ── あなたが投資したい企業とは?

経営者自身の想いや戦略を発信しグローバル投資家に応えるIR

スパークス・グループ
代表取締役社長
阿部修平

投資判断の3つの着眼点

Q1 ── ご自身の運用スタイルは。

スパークスは1989年の創業以来、日本株運用を中心に運用規模を拡大してきた。グループ全体での運用資産残高は2025年8月末時点で2兆576億円に上る。3年前からは改めて自分がリードする日本株運用チームを立ち上げ、ファンドの運用に直接携わっている。

当社は「バリュー投資」を基本とし、企業の実態価値と株価とのギャップを投資機会としてきた。企業の実態価値を把握するには、財務諸表などに加え、企業との面談を通じて生きた情報を収集しながら調査を行う。こうしたボトムアップ・リサーチを忠実に徹底し続けたことが、当社が長年にわたり成果を出し続けられている理由と考える。「マクロはミクロの集積である」という投資哲学は、まさにスパークスの真髄だ。

Q2 ── どのような企業に投資先として魅力を感じるか。

企業の実態価値を把握する上で重視しているポイントは3つだ。まず、経営者が正直かつ誠実なことだ。2つ目は、どの市場に挑むかという着眼点。多くの人が見過ごしているが本人が面白いと確信できる市場を選ぶことが成功に繋がると考える。最後に、ビジネスモデルの独自性である。革新的かつ自分の頭の中の戦略を“貨幣化する仕組み”を構築できるかどうかがカギとなる。

上場企業は責任ある「公的な存在」

Q3 ── IR開示やコミュニケーションで企業に期待することは。

IRにおいては、経営者自身の考えを明確に示すことを求めたい。株主還元に対する姿勢などを曖昧にせず、会社の方向性や戦略の道筋を言語化して発信することが重要だ。上場企業は公的な存在として社会に責任を持つべきであり、形式的な開示ではなく自らの考えを表明する姿勢が不可欠ではないか。

Q4 ── 統合報告書のどこを見るか。

現時点では統合報告書を投資判断に活用している部分は少ない。投資家としては、将来の成長可能性も一定程度加味するものの、人材戦略や地球環境対策などの非財務情報についても「将来的に貨幣価値に換算し得るかどうか」を基準に判断する。ただし、非財務情報の開示は社会的責任の一環であることから、今後その重要性は増していくだろう。

Q5 ── 企業IRで印象的な取り組みは。

過去に比べ日本企業のIRへの姿勢は改善している。以前は株主対応を軽視する企業も多かったが、近年は株主還元や資本効率に関する議論が進み、経営者が株主と真摯に向き合う例が増えている。ある老舗企業では社長が自ら株主還元の在り方について当社に相談に来たことがあり、記憶に残っている。

Q6 ── 日本企業に対する海外投資家の関心が高まる条件とは。

過去30年のデフレ環境が日本株を停滞させてきたが、米国株市場の割高感や世界の多極化を背景に、日本株は再評価されつつある。GDP(国内総生産)の規模やアジア圏という点で優位性があり、海外投資家は日本を無視できなくなっていると考える。

Q7 ── 国内外の注目トピックを。

世界が多極化へと移行しつつある中で、日本企業は株主をはじめとするステークホルダーとの関係性を再定義し、主体的に考えを発信する必要があるだろう。企業自身が理念や戦略を明確に示し、グローバルな投資家のニーズに応えることが求められている。政府や公的機関も株式市場に関する見解を積極的に発信すべきだ。