「事業の経済性」を議論したい
足元の運用資産総額は約3000億円。内訳は、米国株、日・米・欧株、日本株の3つの公募ファンドが合わせて約1000億円、残りが機関投資家向けの株式ファンドだ。
ファンド運用を始めた2007年以来、短期売買での利益積み上げではなく、持続的に企業価値を増大できる企業に注目し、その価値の増大を長期的に享受する手法は変わらない。
「付加価値の高い産業」「長期的な潮流」、そして高い技術や独自のサービスで他社が真似できないビジネスを展開している「圧倒的な競争優位性」の3要件を備えた企業だ。

常務取締役
奥野一成氏
そのような「構造的に強靭な企業R」を長期保有することで企業価値の増大を享受することができるので、相場変動に一喜一憂する必要はなく、たとえ株式市場が5年間閉まったとしても構わないと思っている。
IRとは投資家向け情報提供、広報ではなく、本質的には資本政策の一端を担う非常に重要なファンクションだと考えている。目先の数字の話や単なる資本コストの算定ではなく、その背後にある「事業の付加価値や競争優位性」やそれに基づいた「キャピタルアロケーション(資本配はいふ賦)」といった事業の経済性そのものについて論理的に議論させてもらいたい。
我々は企業訪問に手ぶらで行かない。長年のグローバルな企業分析の蓄積を活用した、我々独自の「見立て」を資料として作成し、議論の土台としている。統合報告書のCEOメッセージには、経営哲学や沿革などが盛り込まれているので資料づくりの参考にしている。
個人向けの手触り感のあるIR
2025年夏、長年投資している米国の農機メーカーがブラジルで開催した事業説明会に参加した。自社の農機が使われている東京ドーム6000個分の巨大な農地に案内され、さらに「この農地26個分で様々な農機が使われている」との話に触れ、リアルな競争優位性を体感した。
その手触り感と業績に関する数値を統合的・有機的に理解することで、持続的に価値を生み続けることのバックボーンとしての事業の経済性が見えてくると信じている。
日本企業はROE(自己資本利益率)目標など将来展望を語りがちだ。それも大事だが、現時点で自社のどの部分に競争優位性があり、それが他社にとってどう参入障壁になっているかをもっと説明すべきだ。
未来を語ることも重要だが、自社の競争優位性と過去の実績を論理的・実証的に語ることが、海外の長期投資家を惹きつけるには必要だと思われる。
個人投資家は、機関投資家のような定期報告の縛りがないため、真の長期投資家になれる。新NISA(少額投資非課税制度)も長期投資のインセンティブとして働く。企業IRは、これまでは機関投資家向けが効率が良いことは事実だし、それが主流であったが、今後は新NISAを使った長期個人投資家を惹きつけるような手触り感のあるIR(工場見学、事業説明会)などが重要になってくるのではないか。